ドベの闇の中のまたたく光

とほほ乾坤一擲の対決


吉見の前に8回終了までわずか1四球のみ、時間はまだ8時20分を回っていないのに球場を覆う重苦しい空気。
今日は本拠地で迎えた今季最終戦。この試合限りで球団を離れる西山、瀬戸、鶴田、町田にとってははなむけの大事なゲームだった。
夜だとさっぱりダメな2軍ラインナップはそんなこと知るかとばかりに、凡打の山を重ねていく。代打町田もあえなく撃沈し、8回終了、あとアウト3つ。西山も瀬戸もはなむけ代打に出すとなると、今日の吉見の前では自動で2アウト献上は見るに明らか。
素人童貞を卒業した井川*1にお祝いのノーヒットノーランからわずか2週間。1ヶ月あたり2度献上なんて前代未聞の事態がもう目前に迫っていた。
俺は頭を抱えた。もうやめようかな、こんなチームのファン。
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瀬戸がここで守備につく。現役引退を決めた瀬戸、マスクをかぶるのもこれで最後だからということだろう。球場は沸いた。ドラフト1位で期待を集めて入団しながら、ついに正妻の座を獲得できなかった内野安打の名手。
そして、最後に、瀬戸に俺たちが求めたものはただ一つだった。パスボール。
奴は、やってのけた。ファンが望むままに。
かつて、これほど賞賛され、感動を呼んだパスボールがあっただろうか。
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9回ウラ。消沈したムードを救った瀬戸の超人的パフォーマンス。それでも、吉見のピッチングは完璧だった。
1人目、その瀬戸にあえて代打浅井。山本監督が長年患ってきた左右病を、ここにきて打ち捨てた起用だった。しかし、願いむなしく、浅井はあえなくセカンドゴロに倒れる。一転して、球場をまた重い空気が覆う。
2人目、広池に替えてトレードの決まった代打西山。90年代のカープを支え続け、古田からベストナインをも奪った男。
本来ならば、万雷の拍手で送り出さなくてはならない場面だった。しかし、はなむけとなるには余りにも気の毒な場面での登場。選手会長西山、あえなくショートゴロに倒れる。
もうだめだ。
3人目、福地に代打前田。
当然だ、ここまで26人でシメ上げてきたピッチャー相手に対するはここまでシーズン16打席凡退男。前日、前前日は上位を打たせてもらいながら連続4タコでついに9番降格。2打席目は三遊間に抜けようかという当たりを放つものの、村田の好守に阻まれる。
なわけで誰もが代打前田を予想した。
  
・・・しかし、ところが、なんと。福地続行。
   
山本浩二の乱心、数あれど、もう我慢の限界。怒号の舞う広島市民球場
福地は1−1からの3球目を強振した。
 
終わったと 思っていたのに 打っちゃった
 (なんのひねりもなし)
 
打球はレフト古木の頭上を越えていく。
サヨナラヒット!

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          |:::::::::::::::::  \________/    |  レフトとライト交代し忘れたよ
           ヽ:::::::::::::::::::.  \/     ノ
   ⊂二 ̄⌒\                 /⌒ ̄二⊃
      )\   ヽ               /  /(
    /__   )             (   __\ 
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((/                               \))

サヨナラヒット!
サヨナラヒット!
サヨナラヒット!
サヨナラヒット!サヨナラヒット!サヨナラヒットオオオォォォオオオオオオオ!(違う)
 
最悪の負け試合を最高のネタ試合に変えてくれた孤高のミラクルノーヒットスポイラー福地*2
これで来季も首が繋がった!やったぜ!

こんなどうしようもないゲームでも盛り上がれる野球って素晴らしい。だが来季はいいかげん勘弁な。
大ちゃん、監督おつかれさま。あと2試合あるけど。
 
そして瀬戸、西山、まっちー、長い間ありがとう!
 
 
 
鶴田は登録すら無しかよ _| ̄|○   他球団でカープに復讐できるさ、きっと

*1:最近、いつもと言動が違うのでそう言われている。

*2:実は上には上がいた。1952年6月15日、別所毅彦完全試合を寸前で阻止した神崎安隆。彼の安打は生涯でその1本だけだったという。