朝鮮紀行

朝鮮紀行〜英国婦人の見た李朝末期 (講談社学術文庫)
反日、女性蔑視、閉鎖性といった、かの半島独特の伝統の背景にあるものは何か。日本の干渉を受ける直前、約100年前の朝鮮半島の姿が克明に記されたこの紀行記には、そのヒントがちりばめられていた。
日帝(戦前の日本)がウリナラの全てを収奪した」とする韓国側の主張に対し、反証として引用されることで、ネット上ではそこそこ有名な文献である。
作者、イザベラ=バード女史は、朝鮮の地勢(交通、鉱山の探査、商業形態)を調査し、キリスト教布教の可能性を探る使命のもと、国王に会い、船で川を上り、馬で峠を越えた。
当時の朝鮮は、秀吉の出兵からこのかた、日本よりも厳しい鎖国を300年来続けていた。日本とのかかわりは「朝鮮通信使」とわずかな漁民のみであったという。しかし、人々は日本を罵り、秀吉への恨みは忘れないと言う。
支配階級(両班)は腐敗して借金を重ね、金で身分は売り買いされている。見せ掛けの「孝行」がもてはやされ、人々はこぞって見栄と嘘の上塗りに精を出す。仏教は迫害され、女性は昼間に家から出られない。悪霊払いには大枚が支払われ、都市では祈祷の罵声が止むことはない。
筆者は、温暖で恵まれた気候にもかかわらず苛酷な朝鮮半島の状況とともに、その支配下を抜けてロシア領に逃亡した朝鮮人の姿をも見る。彼らは、労働にいそしみ充実した裕福な生活を営んでいた。
彼女は確信する。硬直した儒教信仰こそ、諸悪の根源であると。
戦後50年を経て、情報と物質の障壁はなくなった感のある日本と韓国。しかし、二者の礎となるもの、過去にそれぞれの祖先が受け継いできたものは全く異なるものであることを、理解しなくてはならない。
 
500年後も彼らは日本に謝罪と賠償を求め続けているのだろうか。